2006年度分前半へ
06/11/18のバレ
ルーフ「あらかたの壁は切り開いておいた。その場所は…」
管理室らしきところでルーフがいろいろと指令を出している。
ルーフ「進入した者が立ち往生しそうな箇所を作っておいた。そこに重点的に配備しろ。
残りの小隊は一名以上の上級兵を含めるように。磯野家やその仲間と遭遇しても
敵が手負いでなければ戦ってはならん」
外での戦いはアナゴが全滅かほぼ全滅させてしまったため、戦いは建物の中にまで及んだ。
ルーフに追い詰められたというような様子は感じられず、淡々と命令を出している。
ルーフ「以上だ。磯野家は我々元老が戦う」
命令を出し終えたようで、そのまま部屋から立ち去る。
ルーフ「オーディスが指揮を丸投げしてくるし、ムニルとは連絡がとれん…
ありえないことが立て続けに起こっているな。働き者がいなくなると面倒なものだ」
ルーフ「奴らの実力的には大したことないが、気結晶を持っているからには、
おそらく目的は『あれ』だ。それだけは阻止せねばならんな」
気結晶を持っているのはノリスケたちなので、「奴ら」とはノリスケたちのことと思われる。
廊下のある一箇所の床が、大量の血で汚されている。だがその場には人間はおらず、
移動したことを示すように血は細く伸びており、赤い軌跡をたどると、そこには海平がいた。
海平は十数人の帝国兵と戦っている。フラフラになりながらも戦い、敵はあと一人。
海平「ごふ!」
派手に吐血した。前かがみになって苦しんでいる。
帝国兵「もらった!」
帝国兵が剣を振り下ろした。しかし海平は対して気合を入れてもいないのに、
白刃どりどころかそのまま剣をへしおる。
海平のストレートはきれいに顔面に決まって、帝国兵をふきとばした。
海平「誰か、味方が来てくれんかのう」
意識を保っているかどうかはわからないが、海平はその場で倒れてしまった。
TARAが復活したときにいた祭壇の間。祭壇は光輝いており、それはTARAが存在することを示す。
その光の中心にイクラが立っていた。まばゆい光の中に悠然と佇む姿は、
神か、それに類するもののようにも見える。あるいは最後のボスといった感じか。
タラオ「こんなところにいたんですか、イクラちゃん」
その祭壇を見上げてタラオが言う。
祭壇に向かう姿は敵に挑む挑戦者のよう。これまでの流れを考えれば、立場はむしろ逆がふさわしい。
とはいえ、室内は波平とゼビウスの戦いでかなり壊れているのであまり風情はない。
タラオ「そこは帝王の居場所ですよ。どいてください」
イクラ「バブー」
タラオ「本当にふさわしいのはイクラちゃん?いつから減らず口をきくようになったんですか」
タラオは足元のレンガ大の瓦礫を拾い上げる。ゆっくりと投げる動作に入った。
タラオ「さっき程度の強さじゃ、僕には勝てませんよ」
石は物凄い速さで投げられる。しかし、イクラの眼前でピタリと止まった。
イクラ「ha-i」
イクラが一言となえると、そのあたりにあった瓦礫という瓦礫が、さらに壁と床と天井の石材が
レンガ大に砕かれ、一斉にタラオに向かってゆく。
その軌跡が見えないほどの速度でタラオに衝突する。
タラオはそのうち15ほどを防ぐが、残りの50くらいを全身にくらってしまった。
タラオ「今のは、ちょっと痛かったですよ」
それでも、大して効いた様子はない。
ワカメ「イクラちゃんのESPも大幅にパワーアップしてるわ」
またもや立体映像で二人の戦いを見ている。しかしワカメはあまり嬉しそうではない。
ワカメ「イクラちゃんは一万二千年前の戦いを再現できるほどの力を得たのよね?」
黒フード「そうでございます。そのために戦いの記録を見せたのですから」
ワカメ「戦いを再現するには、敵であるTARAもいなければならない…間違いないわ」
ワカメが何を考えているのかはわからないが、何かの確信を得たらしい。
ワカメ「あなた、帝国にかつがれたわ。それとも、あなたも帝国とグルだったのかしら」
問われた男は自分が何を言われたか理解できていないようだった。
黒フード「何を…ぐふっ」
何かを答える前に、男は胸を槍で貫かれ、くずおれた。
帝国兵「どっちでもいいさ。神歩が復活した以上、こいつに用はない」
ワカメ「TARAに対抗するために神歩を立てようと帝国内部に入り込んでたけど、
逆に利用されていたってことかしら」
帝国兵の持っていた槍が伸びてきた。(伸びる槍を持っているので、上級兵か)
ワカメはそれを間一髪でかわす。ワカメの衣服が浅く裂けた。
帝国兵「今の段階で計画を知られても困るから、殺っちまわなきゃならねえなぁ」
帝国兵はサディスティックな笑みを浮かべる。
帝国兵「こんなところで二人きり。精一杯抵抗してみな!」
またもや槍が伸びてきて、ワカメは間一髪でかわす。
ワカメ「わざとはずしているわね。いい性格してるわ」
帝国兵「そうさ。俺はいつでもお前を殺れる」
趣味の悪い笑みを浮かべる帝国兵を、ワカメは睨みつける。
ワカメ(実力ではかなわない。どうすれば……)
煽り 窮鼠、猫を噛むか!?
06/11/21のバレ
帝国兵「さあ逃げろぉ!」
言葉とは裏腹に、ワカメの動きをうまく牽制しながら槍を突き出している。
ワカメは必死に避けるものの、服が裂かれる程度に槍先が触れている。
前回のワカメの台詞が正しければわざと当たらないようにやっているわけだが、
肌はほとんど傷ついておらず、意図してやっているとしたらかなりの腕前である。
槍が伸びてゆき、ワカメに迫る。かろうじて避けて、その際に掌をチラッと見せる。
帝国兵(灯かり?)
正確には、見せたのは掌ではなく、手に持っていた、気で発光する灯かりだった。
帝国兵「そんなもんで目がくらむとでも思ったか!」
光量は大したことなかったようで、次の攻撃も正確にワカメを狙い打つ。
今度はワカメの足をかすめ、ワカメは小さな悲鳴をあげる。
歩行に支障があるほどの傷ではないようで、次の一撃はわき腹にかすめる程度ですんだ。
ワカメは逃げるのに必死でも、槍が伸びてくるたびに光をともすのを忘れない。
ワカメ「えいっ!」
ワカメが腕をぐんっと引く。帝国兵は後ろにのけぞった。
よく見ると、いつのまにか男の死体にピアノ線が結んであった。
ワカメと死体の中間に敵が位置しており、うまくいけば敵に致命傷を負わせられるはずだった。
しかし、敵の反応が勝っており、首のあたりを浅く切っただけにとどまる。
帝国兵「俺が言った抵抗ってのはなぁ、そんなんじゃねぇんだよ!」
槍が伸びて、ワカメのすねのあたりを突き刺した。穂先が鮮血で染まる。
今度こそ当てるための攻撃であり、ワカメに決定打を与えた。
帝国兵「もうちょっと痛がれよぉ」
悲鳴をこらえたワカメに対して不満げな様子。
帝国兵「ほらぁ!」
槍が伸びて、ワカメの二の腕あたりを貫く。
ワカメ「あぁっ!」
帝国兵「ほらほらほらぁっ!」
ふともも、左腕、を致命傷にならない程度に突き刺し、服を裂く。
ワカメの悲鳴と苦悶の声が大きくなり、帝国兵も満ち足りた顔になってゆく。
ワカメの服はちょっと動けば脱げそうになるくらい危うく切られている。
帝国兵「いいぜいいぜぇ!」
それで動きづらいせいというわけではないだろうが、伸びてくる槍をほとんどかわせない。
ワカメに死なない程度の傷を与え続け、苦しむワカメをみては愉悦に浸っていた。
睨みつけてきたワカメを見て、さらにハイテンションになる。
帝国兵「いいぞぉその顔だその顔だよおおおおおおお!!!」
これをどの程度続けたかはわからないが、かなり痛めつけたものと思われる。
帝国兵「さぁさぁこっち見なよぉ」
ワカメ「………」
ワカメは帝国兵を見る。それはささやかな抵抗などではなく、敵を観察するためであった。
帝国兵「どんなふうに殺してほしぃ?」
おどけた調子で、槍を掲げてワカメを見下ろす。
50センチ程度(最小サイズ?)の槍をほぼ真横に構える。槍の延長線上に帝国兵の胴体が来た瞬間がワカメの狙い目だった。
ワカメの手にあった灯かりがきらめくと、槍が物凄い勢いで伸びる。伸びた穂先は壁に届き、それでも槍は伸び、
柄のほうが伸びる。槍は部屋を横断するつっかえ棒となり、その線上にいた帝国兵は串刺しにされた。
帝国兵は柄で腹を貫かれ、壁に磔にされている。
ワカメ「柄で貫くのもなかなかエグいわね」
悲鳴をあげる帝国兵に悠然と歩み寄っていった。
そして、帝国兵の両腕をねじって反撃を完全に封じたうえで暗器の小さい刃物で、何度も帝国兵の腕や足を突き刺す。
帝国兵「ぎぃやああああああああ!!!」
ワカメ「さっきの光にね、見ただけじゃわからない程度のパルスを含めておいたの。
槍を伸ばすたびに光を見せて、「パルスを見ると槍を伸ばす」っていう条件反射を形成させたのよ。
あなたには何を言ってるのかわからないでしょうけど」
相手の体の各位を切りつけたり叩き潰したりしながら解説する。相手は聞いていなさそうだが。
どこをどうやるとどう痛いのか、ワカメは心得ているようで、悲鳴の大きさはワカメとは比にならない。
ワカメ「あなたの趣味のおかげで助かったわね」
楽しそうに痛めつけている。ワカメもそういった趣味を持っている。
ワカメ「でもね、私は弱っていくのをじっくり見るのが好きなの」
帝国兵「うひいいいいぃぃぃ!た、たひゅけ…」
悲鳴を上げられるということは、苦痛は大きいがダメージは少ないようなやり方で拷問している
ということである。描写は省くが、どんどん痛めつけてゆき、たがて動かなくなった。
ワカメ「聞きたいことあったけど…ま、いいか」
敵の死体にはもう見向きもせず、思考をめぐらす。
ワカメ「奴らの『計画』なんて私にはどうでもいい。だけど、その『計画』を完了したあと
神歩かTARAのどちらかを殺そうとするかもしれない。それでなくてもあんなのが戦ったら
どっちかが死ぬかも…それを阻止するためにはどうすれば……」
西原「TARAと神歩がもう戦っているなんて…」
ノリスケ「じゃああそこにイクラちゃんがいるってことかい?」
西原「間違いありません。あれは……」
西原の視線の先には、瓦礫でできた高台、というよりも塔がそびえている。
数十メートルの高さのそれは、数百メートル離れても視認できた。
西原「戦いの舞台です」
煽り 知恵の勝利!そして戦いは…
06/11/25のバレ
太平洋の孤島の山の中。本来だったら高山であったはずの場所。
そこに広大な建物がある。古代帝国を名乗る者たちが根城としている施設。
その真ん中あたりに、本来そこにはなかったはずの塔がたっていた。
瓦礫を積み重ねたのか、そこだけ地面が隆起したのか、高さは数十メートル。
内部構造はないので、塔というよりは塚といったほうが正しいかもしれない。
ともかく、その頂上でタラオとイクラが戦っていた。
戦いを見せ付けるためなのか、邪魔が入らないようにするためなのか、
そんなところが戦いの舞台となっていた。
イクラがタラオを殴りつける。その一撃は強く重く、圧倒的パワーを持つはずのTARAことタラオが
攻撃を受けるたびに後ろに下がらなければならないほどだった。
イクラの左の拳がやってくる。タラオがそれを右腕でガードすると、
その部分が爆発を起こす。その爆風でタラオがわずかによろめいたところに、
イクラの右アッパーがタラオの顎にまともに入った。
しかし、そこでタラオはふっとばされることなく踏みとどまり、イクラの胸にストレートを叩き込む。
ストレートは、イクラに届く直前に、バリアに阻まれた。
タラオ「厄介な力ですね……その攻撃も」
イクラの攻撃は、正しくは、拳を叩きつけることで攻撃しているのではなく、
タラオに力場を叩きつけて攻撃するために拳を突きつけているというほうが正しかった。
格闘ではなく、超能力の範疇といえる。
とにかく、イクラはタラオ相手に互角かそれ以上の戦いを演じていた。
サザエ「多分、あそこにタラちゃんとイクラちゃんがいる……
決着がつくまえに私がするべきことは……」
ワカメ「あいつらがタラちゃんかイクラちゃんを殺す前に、なんとかしなくちゃいけない……」
それぞれ違う場所から、サザエとワカメは二人の戦いを案じている。
西原「この砲台は数百メートル離れていても届くはずです。
あんなに目立つところで戦ってくれれば、むしろ好都合です。ただ問題は」
西原は、この場にある気結晶を見る。ここにあるのは3つ。
西原「まだ波平さんの分がないんです。その出力でTARAを倒せるのかどうか…」
タイコ「4つあれば倒せるっていう保証もないんでしょう?」
ノリスケ「そうだよ。TARAとの戦いはすぐにでも止めるべきだ」
西原「僕はTARAがある程度弱ってからやりたいと思うのですが」
「やはりここにいたか」
口論に突入する前に突然割って入った声。そこにいたのはルーフだった。
ルーフ「そこの機械を持っている少年、お前があれをやったんだな。おかげで苦労させられた」
西原(時間稼ぎは少し足りなかったか…)
ルーフ「気結晶を集めていたようだが用途は限られてるからな。真っ先にここに来るべきだった」
ルーフは剣を鞘から抜き、構える。剣には血のりがべったりとついていた。
ノリスケ「海平おじさんを…!」
ルーフ「とどめは刺しそこねたから生きているかもしれんな。
だが再会させるより前に俺がお前らを殺す」
淡々と言う。サブのときと違って戦いにおいて感情を見せることはない。
西原たちは3人がかりでとびがかっていった。
ルーフは右手に剣を、左手に槍をかまえて迎え撃つ。
ルーフは槍から光線を放ち、西原を狙う。西原が光線を避けると、その動きを完全に予期した上で
西原のPCを真っ二つに斬った。さらにノリスケ、タイコの攻撃を鮮やかにかわす。
西原「な……!」
ショックを受ける西原。加えて、今にも叫びだしそうなほど怒りを見せている。
ノリスケ「なんでそれを最初に斬るんだ?」
ルーフ「簡単なこと。俺にとって一番脅威になるものを最初に狙ったのだ。
あとは今のを三回繰り返せば、お前ら三人を斬れる」
西原「そううまくいくかっ!」
西原がとびかかり、ノリスケとタイコもタイミングを合わせて、再び3人がかりでとびかかる。
身を翻して西原のパンチを避けて西原を斬り捨てる。
左手から来たノリスケの腹を槍で貫き、タイコの攻撃を軽やかにかわして、タイコを斬りふせる。
結局、前言とは違って3人を5コマで倒してしまった。
ルーフ「今はこれを使われては困るのだ。余計なことをしなければ殺さなくてもよかったのだがな」
ノリスケ(今は?)
倒れている3人にとどめを刺そうと、まずはノリスケに剣をさし向ける。
だが、剣を動かすより前に、ルーフは一言呟いた。
ルーフ「やはり生きていたようだな。来てくれるとは思わなかったぞ」
笑顔になったわけではないが、少なくとも感情の入った表情になった。
感慨深げに、ある方向を見る。そこにいたのはサブだった。
サブ「こんなめんどくせえことに深入りしたくなかったけど、波平さんと約束しちまってな。
ここに誰かいるはずだって言われたよ」
遠い目をして言うサブ。
ルーフ「ナミヘイか…あの男に感謝しよう。おかげで再び戦える」
サブ「あんたとも決着をつけなきゃならねえ。俺のプライドに賭けてな!」
サブが光に包まれ、バトルライドスーツを身にまとう。
カスタマイズ後では2度目になる装着シーン。いつもよりコマ数を多く使っている。
サブ「あんたの武器と俺とカティの鎧。どっちが強いか、決着つけようじゃねえか!」
煽り 最強の鎧VS最強の剣!
06/11/28のバレ
サブはやる気十分で臨戦態勢だが、ルーフはまだ構えていない。
ルーフ「俺とカティの鎧?あの少年はどうしたのだ?」
サブは無言で首を横に振った。
ルーフ「そうか…八年前の決着をつけたかったのだがな」
愁傷の思いがあるのか、切なそうな顔をする。
サブ「八年前?」
サブは疑問に思った。カティの外見を考えれば、8年前の彼は2〜4歳程度と思われる。
ルーフ「俺は八年前に、当時の機動装甲を着けた守護者と戦ったのだ。
彼は実力の差にめげずに俺に挑み、俺に勝つために強制強化までした。
実力は伯仲した。だがあと少しで決着というところで、彼の体は強化に耐えきれずに…」
上のルーフの台詞による説明は、回想シーンとともになされた。
簡潔にではあるが、傷だらけになって戦うルーフ(年齢は十代半ば程度か。
このときは三日月刀らしきものとナイフを持っている。)と守護者、
そして守護者の体が破裂するシーンが描かれている。
ルーフ「いや、あのまま続けていれば負けていたのかもしれん。あれから修行を重ねて
元老にまで上り詰めたが、その思いは拭いきれなかった。
そして八年がたち、機動装甲の後継者とお前が現れた……」
サブ「カティのことは俺も残念だと思ってる。だが俺のバトルライドスーツはあいつの魂を受け継いだ。
俺はそう思ってる」
ルーフ「道具に魂とかいうのはよくわからんが
お前を倒せばあの戦いに決着をつけられる。そう思わせてもらおう!」
サブ「カティがどう思うかはわからねえ…だが、俺はあいつの分も一緒に戦う!」
ルーフ「他人の分も戦うだと!?」
サブの主張をあざ笑うように、左手の槍からビームを放つ。それは真っ直ぐサブへと向かっていった。
それを避けたところを狙って斬る、というのがルーフのよくやる戦い方だったが。
サブは全く避けようともせず正面から受け止めた。
サブ「波平さんの言うこともわかる。でも俺は俺のためにあいつの分も戦うんだ!」
ルーフ「お前、これが効いてないのか」
精神をそれなりに鍛錬しているのか、動揺は見られない。
サブ「効いてるさ。でも避けたら思う壺だろ」
サブはルーフに向かって平然と歩いていく。
サブ「あのとき、俺はバトルライドスーツをあっさりと斬られたせいでこれを信じられなくなってた。
そのせいでそれからいいようにやられちまった」
ルーフ「信頼など関係ない、ただ鎧が耐え切れるかどうかだけだ!」
間合いに入ってきたサブを、ルーフは袈裟懸けに斬り付ける。
サブは左腕を掲げ、剣をガードした。
そして、剣はサブの腕を切断することなく、数センチ食い込んだところで止められる。
ルーフ「馬鹿な!?」
剣によほどの自信があったのか、今度は動揺を見せるルーフ。
そこに、サブのストレートがルーフの胸にクリーンヒットした。
ルーフは鎧を着ていて、その上からの打撃だが、それでもルーフは盛大にふっとんだ。
ルーフ「ぐふっ!」
壁に衝突し、壁の一部が崩れる。相当にダメージがあったようだがすぐに起き上がり、
右手に「気」をこめると、サブの左腕に食い込んだままの剣がルーフのもとへと帰っていった。
サブ「どうだ?自慢の剣が通じなかった気分は」
ルーフ「お前の言ったことが少し理解できた」
ルーフは剣の刃を見つめる。そこには海平らを斬った血のりがまだついているのだが。
ルーフ「剣はお前の腕をわずかながら裂いた。一歩間違えたら、と思うと
とてもお前のような真似はできないだろうな」
ルーフは再び構える。さっきとは構えが違う。
ルーフ「察しがついているかもしれんが、この剣は鎧を着た相手に勝つためのものだ」
サブ「探し求めてた相手とやっと戦えるってわけか…」
ルーフ「そうだ。カティがいなくなった以上、お前に全ての力をぶつけなければならない!」
ルーフがサブに肉薄すると、突然、踊りのような動きを始めた。
当然、剣も激しく動き、剣そのものが踊っているようにも見える。
剣は、上下左右、あらゆる方向からサブを斬り付ける。
まるで剣舞そのもので戦っているかのようだった。
あっという間にサブのバトルライドスーツの全身に浅く傷がつけられた。
だが、サブはじっと耐える。
サブ(ルーフの本当の狙いは、この動きで俺を惑わして、本命の一撃を斬りこむこと…)
激しく『踊る』ルーフと、じっと耐えるサブ。サブは剣の動きを観察する。
だがそこに、ルーフの左手の槍がサブの右腕の二の腕あたりに突き刺さる。
その箇所にさらに剣を突き刺した。ニ連撃はスーツを貫き、上腕動脈を切ったのか、
そこから大量に血が噴出した。
ノリスケ「サブちゃん!」
倒れたままのノリスケが動揺する。他の二人はどうか不明だが、ノリスケは意識を保っているらしい。
普通ならそのまま失血死してもおかしくないが、
サブが槍と剣を引き抜くと、出血はすぐにおさまった。
サブ「カティの改造…ここまで凄い効果があるとはな」
ルーフ「カティが改造?あいつの分も戦うとはそういう意味だったのか」
サブ「そういう具体的な概念じゃねえ。これにはあいつの魂がこもってんだよ」
ルーフ「そんなものがこもるとは思えんし、こもっても意味がない」
サブ「わかんねぇんなら教えてやる……!これが、魂だ!!」
全力を込めて、サブはルーフの顔をぶん殴った!
煽り 伝えよ、魂!
06/12/05のバレ
サブ「これが、魂だ!!」
顔面をぶん殴られたルーフは、盛大に転がされ、壁に激突した。
ルーフ「なにが…魂だ」
床にへたれこんだまま言う。次の台詞は、起き上がりながら言う。
ルーフ「気を込めただけではないか。気を込めれば威力が増す。ただそれだけだ」
ルーフ「技の威力を決めるのは力と打点と気。魂などで人を倒せるものか」
サブ「それだけじゃねえ。最後の最後に勝敗を分かつものがあるんだよ」
ルーフ「…議論は何の意味も持たないようだな。魂で勝てるというのなら
俺の攻撃を耐え切ってみせろ」
すると、ルーフの鎧、肩あて、手甲、ひじ当て、すね当て、防具の全部のパーツが光を放ち、
ルーフは何かのポーズをとる。剣は鞘におさめて両手で槍を持つ。
ポーズを言葉で表現するなら、「槍を持って磯野砲」。
ルーフ「個人の使うものとしては最強の武器だ。この鎧も武器の一部、“魔弾”は何者も逃がさない…
その威力はTARAをも殺せる…という触れ込みだが、残念ながら人に向けて撃ったことはない」
要はこれから必殺技を使うという宣言である。
ルーフ「だがいかなる物質も“魔弾”には耐えられない。“魂”とやらで防いでみろ」
ノリスケ「サブちゃん、挑発に乗っちゃいけない!」
倒れたノリスケが叫ぶ。
サブ「俺も知りてえんだ。こいつがどこまで耐えてくれるかをな。
俺がどんなバカやっても、こいつは必ずついてきてくれる」
ノリスケを顧みることなく、ただ前を見て言う。
ルーフ「よく言った」
磯野家の面々が磯野砲を使うときのように、気を集中させていく。
隙だらけだが、サブは何もせずに気を溜めていた。防御に全てを集中できるように。
ルーフ「この技に名前はない…だから、お前の名を技の名としてこの世に留めよう!!」
ルーフが槍を放った。
ルーフがやったことは、ただ単純に「槍の投擲」。
ただし、ルーフの纏う鎧そのものがルーフと連動し、人間にはありえない勢いで槍を投擲する。
いわばルーフそのものがピッチングマシーンになったような技だった。
次の瞬間、槍はサブの胸に突き刺さる。
正確には、サブ自身に突き刺さるまいとバトルライドスーツが防いでいるが、
槍はそんなBRSを貫こうと、槍自身が突き進んでゆく。
サブ「ぐぐぐぐぐぐっ………」
気合を込め、必死に耐える。そうするとBRSが耐えてくれると言わんばかりに。
ノリスケ「横に避けるんだ!そうすれば…」
サブ「だ、駄目だ…」
ルーフ「そうだ…どこまで、逃げても…“魔弾”は決して、逃さない…」
ルーフは気を消費したせいか、息を荒らげている。
サブ「そうじゃねぇ…」
サブは足を踏みしめ、がぶりを振る。
サブ「ここで退いたら俺は二度と勝てねえ!」
サブの胸にくいこむ穂先を押し戻さんと歯をくいしばる。
槍もBRSも、持ち主の気に呼応して力を増す。しかし均衡は長く続かなかった。
ルーフ「忘れたわけではないだろう、この槍の能力を!」
槍の穂先からビームが放たれる。
サブ「が…」
ビームのダメージで気が抜けたせいか、サブが苦痛に顔を歪めた次の瞬間、
槍がサブの胸に突き刺さる。いきなり断面図が描かれ、穂先は心臓まで1cmもない。
サブ「負けられねえんだああああああ!!!」
サブが叫んだ次の瞬間。突然、大爆発が起きた。
爆発は部屋の壁全てをなぎ倒し、意識を失ったタイコと西原はもちろん、ノリスケも
なすすべもなく吹き飛ばされた。あとに残ったのは……
ルーフ「おそらく、槍が俺とお前の気のせめぎあいに耐え切れなかったのだろう…」
ルーフは前を見る。そこにいたのは。
ルーフ「その『機動装甲』がこれ以上の戦いに耐えられるとは思えん。
それでも、二人が立っている以上は戦いを続けねばならんのだ!」
波平戦のとき以上にボロボロなBRSを着たサブに向かって、剣を抜いて斬りかかる。
サブ「勝った…」
サブは剣を左手で掴み、右で殴りつけて叩き折った。
ルーフ「!?」
さらに、ルーフの胸に正拳突き。ルーフは吹っ飛ばされ、ルーフの鎧が粉々に砕けた。
サブ「バトルライドスーツは勝った…耐え切ってくれた…」
ルーフ「くっ…!」
ルーフ(あるのか…この男に素手で勝つ手段…)
ルーフ自身もダメージは深く、口の端から血がにじんでいた。
ワカメ「あのてっぺんでTARAと神歩が戦ってる…」
高さ数十メートルの瓦礫の塔を見上げ、ひとりごちた。
ワカメ「いるんでしょ…?」
どこにともなく問いかけると、突然闇がわだかまり、そこから黒いフードの男が現れた。
黒フード「いつから私のことを…?」
ワカメ「あれは『我ら』って言ってたから。どこかに誰か仲間がいると思ったのよ」
新たに現れた黒いフードの男は、前の奴とよく似ていた。
何かの力で似た容貌になっているのか、黒フード自体が記号的な存在で
見分けることに意味はないというメッセージなのかは不明。
ワカメ「教えなさい…あの二人の戦いを止める方法を…」
煽り ワカメの決断。はたして闇の男の返答は…
06/12/09のバレ
フード「戦いを止める…?それはできませぬ。それに、TARAと神歩を戦わせたのは
あなた様ではありませんか」
ワカメ「事情が変わったの。奴らの計画がうまくいけば、奴らはタラちゃんかイクラちゃんを
殺そうとするわ。少なくとも三元老が倒れてくれないとまずいの」
黒フード「この戦いはあなた様の意志でもありますが、我らの意志でもあります。
そして何より、あの二人の意志なのです。あるいは歴史の意志……運命かもしれませぬ
戦いが始まった以上、事態は我らの手を離れたのでございます」
ワカメ「私はまた…何もできないの…」
悔しそうに歯噛みする。
イクラ「babu-」
呪文?とともにタラオに超重力がかかる。
立っているのもやっとのタラオにイクラはビームを放つ。
重い体を引きずりながら4発まではかわしたが、5発目をまともにくらってしまう。
それを起点に、十数発のビームを立て続けにくらってしまう。
はずれたビームの一つが大きめの岩を砕いていたので、威力は推して知るべし。
タラオ「これくらい……っ!」
重力の戒めを跳ね返し、ビームを放つイクラに真っ直ぐに飛び込んでゆく。
タラオ「DEATH!」
戦闘経験の少なさゆえか、タラオの反撃を真正面からくらってしまうイクラ。
イクラ「ハーイ」
タラオ「確かに強くなってます。でも僕には勝てません」
短い会話のあと、戦いを再開する。
若いフネを抱えながら歩くサザエ。気絶している人間を抱えるのは結構な負担である。
その廊下に、数十人の帝国兵と海平が倒れているのを見つけて驚愕した。
サザエ「どうしたの!?」
海平も意識をなくしているらしく、返事はない。
サザエ「もう…どうしろっていうのよ」
ルーフ(どうすればいい…)
武器と防具を失ったルーフの前に、崩壊寸前なほど破損したバトルライドスーツを着たサブがいる。
ルーフ(再生能力がある相手に、逃げるのは論外。ここで倒さねばならない。
だが勝ち目はあるのか…?)
逡巡するルーフを尻目に、サブはいきなりBRSを脱いだ。
サブの横にボロボロのバイクが現れる。
サブ「決着をつけようぜ」
ルーフ「正気か!?何を考えている?機動装甲が壊れたのか!?」
予想外の行動に、有利になったはずのルーフのほうが驚いてしまう。
サブ「それもある。だけど、これは俺のけじめの問題だ。
今のは俺のバトルライドスーツがそっちの武器に勝っただけだ。
今度は俺がお前に勝つ!」
サブが突進する。しかし、それを見切ったルーフは簡単にかわして、カウンターを決める。
ルーフ「ふざけるな!俺はお前が強いと認めた。その強さを恐れさえした。
だが敵をなめるような奴は絶対に許せん!」
倒れたサブに向かって激昂して叫ぶ。
サブ「そんなんじゃねえよ…ただ俺はわかってもらいてえんだ。魂ってやつをな!」
サブのパンチがルーフの顔面にヒットする。
ルーフ「殴るだけなら俺にもできる!」
サブを殴り返す。
サブ「口で言ってもわからねえ。今は俺と戦えばいい!」
さらに殴り返す。
ルーフ「それは…傲慢だ!」
サブのパンチをかわして、腕をとり、投げ飛ばす。倒れたところを、さらに踏みつける。
ルーフ「なぜ魂にこだわるかは知らんが…妄言もいい加減にしろ」
倒れたサブを睨みつけていう。しかしサブはすぐに起き上がった。
中島「ん…なにか騒がしいな」
眠りから醒めた中島。そこには戦いの音がしていた。
中島「…先生!?」
眠い目をこすり、あたりを見ると、先生が十数人の帝国兵を相手に戦っていた。
下級兵、中級兵をうまくさばいて、人数の差をものともしない戦いを見せる。
最後に上級兵が剣を持って攻撃してきた。
中島「そいつの武器に気をつけてください!」
切っ先をかわしたと思ったらソードビームがやってくる。
次々とやってくる『飛ぶ斬撃』に、防戦一方の先生。中島が加勢しようとしたが、それを手で制した。
ソードビームをかわしながら、上級兵の肩のあたりに、チョーク投げを命中させる。
それ自体は何のダメージにもならなかったが、一瞬注意が逸れたところを、間合いを詰めて
鎧の防御も意味をなさない関節技で上級兵の動きを封じ、首の後ろを叩いて気絶させた。
先生「武器と防具をつけた彼らの実力は私より上だろう。だが、小さな隙を突けば勝ち目はある」
いきなり意外な強さを見せた先生に、しばし呆然とする。
慣れた戦い方からして、ここに来るまでに帝国兵と戦っていた可能性がある。
中島「それよりもなんで先生はここに」
先生「私の生徒が無断欠席しておるからだよ」
先生の切り替えしに、罰が悪そうに目をそむける中島。
先生「それにしても、この状況はなんなのだ?」
カツオと八百屋が倒れている。さっきまで中島も倒れていた。
中島「それは…」
説明しようとしたとき、中島は妙な『気』を感じた。まもなく、その気の持ち主が現れる。
先生「花沢くん」
現れたのは紛れもなく花沢花子。しかし、甚六のときのように異様な気を放っていた。
中島「先生…いろいろ言いたいことはあるでしょうが、ここは僕にやらせてください」
先生「何を言う。ここは私がやらねばならん」
中島「今の花沢さんは異常なんです。そして僕も…
僕の新しい力を、千里眼の力を、今ここで試したいんです!」
中島は開眼した。
煽り 刮目せよ!
06/12/12のバレ
開眼した中島だが、花沢を見据えたまま動かない。まるで何かを見極めようとしているように。
必然的に、花沢のほうから動くことになる。
中島(たぶん…できる!)
迫ってきた花沢の右フックを紙一重でかわす。パンチの勢いを借りた風圧で中島の髪が揺れる。
続けざまに左ストレート。中島は正面から両腕でガードするが、こらえきれずに後ろに退く。
カツオ「どういうことなんだ?」
中島「起きてたのか?」
カツオ「あんなのがいたら嫌でも起きるさ。花沢さんも甚六さんみたいになっちまったわけか」
中島「パワーだけなら磯野より上だ。だけど甚六さんとはちょっと違う」
カツオは「?」といった感じの顔をした。
中島「見てればわかるさ。だから手だすなよ!先生もお願いします!」
花沢の連続攻撃を、中島はすべてを紙一重でかわす。
中島は防戦一方のように見えたが。
カツオ「中島の戦いを見てやってください。あいつは何か知っている」
中島に加勢しようとする先生を制して、カツオが言う。
先生「どういうことだね?」
カツオ「甚六さんも帝国に捕まって強化改造されたけど、父さんと渡り合える力を持ってたんです。
花沢さんの本来の強さを考えれば、もっと強くなってもよさそうなのに」
先生「ふむ…」
カツオ「それだけじゃない、中島は何かをやろうとしている」
花沢の攻撃をかわし続ける中島。紙一重でかわしているが、表情には余裕が見えた。
花沢の左ジャブを花沢の懐に飛び込む形で回避する。
さらに、次なる攻撃を繰り出そうと、腰溜めに構えていた花沢の右拳を左手で押さえ込む。
中島「勢いをつける前の拳なら力負けしないさ」
そのとき、花沢に表情が現れた。明らかに動揺がみてとれる。
その一瞬を狙って、中島の右の一撃が花沢の顔面をとらえた。
これが会心の一撃だったようで、花沢はそのまま倒れる。
中島「あの24時間で修行していたのは磯野だけじゃない」
花沢から目を逸らさずに言う。
中島「千里眼でいろんなものが見えるようになったよ。例えば人間の気の流れ。
例えばミクロン単位での筋肉の動き。そこから推測される未来の動き」
カツオ「ムニルと同じように、敵の動きを計算できるのか…?」
中島「あれは演算してるらしいけど、僕のはあくまで推測だ。僕の経験則から勘でやっているにすぎない」
カツオ「わざと紙一重で避けて、“目”が正しいかどうかを確かめたんだな?」
中島「ああ。だけど、試してたのは花沢さんもだ」
カツオ・先生「なんだって!?」
中島「洗脳されてるフリしなくてもいいだろ」
言われて花沢は、笑いながら起き上がった。
花沢「最初から気づいてたの?」
中島「千里眼で一目見たときからね」
カツオ「どういうことだよ!?」
カツオは怒りを見せている。洗脳されていないのに中島と戦うなら、
花沢が自分の意思で敵になったことを意味している。
花沢「もっと力が欲しい。それだけよ。甚六さんを強化した方法を聞いたとき、これだと思ったわ」
中島「甚六さんに比べて強化の割合が低いのは、自我を保てる程度にとどめたからだね?」
花沢「あなたたちと戦うことを条件にやらせてくれたわ。これは、私を強制的に覚醒させてくれるらしいの」
先生「バカモン!!」
唐突にこれまで話を聞いていた先生の叱責がとぶ。
先生「何を考えておる!そんなことで本物の力は身に着かん!!」
先生の脳裏には、かつて活性魔液に手を染めたときのことが蘇っていた。
花沢「だから本物の力にするの。私の手で」
花沢の目は真摯だった。およそ裏切り者という言葉が似つかわしくないほどに。
花沢「どうするべきかはわからない。でも、戦えば強くなれる気がする。だから、私と戦って」
中島「はじめからそのつもりだ。僕もこの戦いで何かをつかめるはずだ」
カツオ「先生…やらせてやってください」
先生は押し黙るが、覚悟を決めたように言った。
先生「5年3組の担任としてこの戦いを見届けよう。だが殺し合いは許さんぞ」
それが「始め」の合図であるかのように、二人は動く。
花沢の真正面からのダッシュストレート。中島はガードするが、堪えきれずにうめきをもらす。
中島「パワーの差は歴然か…」
ガードした腕を花沢に掴まれ、そのまま強引に一本背負い。
中島は力に逆らわず、受身をとった。
花沢「いい投げられ方ね」
中島「気の流れを読んでいれば簡単さ」
花沢「なら、これはどうかしら!」
花沢が地面を踏みつけると、中島の足元がわずかに崩れた。
その瞬間に、花沢のパワーに任せたストレート。
地面が崩れて足に力が入らなかったため、ガードはしたものの大きくバランスを崩す。
そこを狙って、さらに一撃。
中島(間に合わない!)
ガードの動作をとれず、みぞおちにまともにくらってしまう。
あえて倒れて、地面を転がって距離を離す。
中島「げほっ、やるね、はなっ、ざわさん」
せきこみながら声を絞り出す。
花沢「目がいいだけで負ける気はしないわ」
中島「僕の新しい力は千里眼だけじゃないよ」
呼吸を整えながら言う。
中島「花沢さんには悪いが勝たせてもらう。君に勝てないようじゃ磯野には勝てないだろうからね」
花沢「あら、言ってくれるじゃない」
花沢はニヤリと笑った。
花沢「私もそう思っていたのよ!」
中島と花沢は、さらに気を高めた。
煽り 目標は同じく!
06/12/19のバレ
中島「考えることは同じか…」
花沢「そうよ。磯野くんを倒す…努力も、人生も、全てはそのためよ!」
中島「それなら、今の僕の持てる力を全部出させてもらうよ」
花沢「へぇ、今までは手を抜いてたっていうの?」
挑発的な笑みを浮かべながら、からかうように言う。さっきまでは花沢が優勢な感じであった。
中島「…僕は自然の気を行使できるようになった」
花沢「おじいさんが使えるっていうアレね。全然上達しないって言ってたじゃない」
中島「うん。扱いが難しくて戦いながらだとうまくいかない。
…だけど、喋りながらなら使えるよ」
花沢「!?」
花沢は何か反応しようとしたが、体が動かない。
中島「周囲の気に拘束を命じた」
動けない花沢を容赦なくサンドバックにする。
中島(ここだ!)
勢いに任せて殴るだけではなく、千里眼で気の流れを読み、攻撃の効きやすい『急所』を
鋭く狙うような場面もあった。とにかくのっけから一方的な展開。
カツオ「なかなかえげつない手を使うな」
先生「むう…己の力のみで成しえたのなら文句は言えんが」
感心したように言うカツオと渋い顔をする先生。
カツオ「だけど花沢さんだってやられっぱなしじゃないさ」
先生「ほう」
花沢の右手がピクッと動いた。
サブはルーフの顔面を狙って拳を突き出す。
しかし、それを簡単にかわしてカウンターを綺麗に決める。
そこで動きの鈍ったサブを投げ飛ばす。サブは強烈に地面に背中を打った。
ルーフ「どうしてだ?」
倒れたサブを見下ろしながら問う。
ルーフ「どうしてこんな戦いを続ける?力、技、速さ、どれをとっても俺が上だ。
実力では俺が一段も二段も上回っている。お前は何を以って勝てるのだ?」
サブ「意志だ…」
サブ「意志で、勝つ!」
起き上がりざまに、ルーフの顔面を殴り飛ばす。ルーフはよろめくが、倒すには至らない。
サブ「拳に意志を…魂を込めろ…でなきゃ俺は倒せねえ!」
ルーフ「何を言う…戦う意志をなくさない限り、拳は止めん!」
次なる拳を繰り出すため、ルーフはふりかぶった。
花沢「タァーーーッ!」
気で拘束されていた花沢の、必死の一撃が中島をとらえた。
拳が中島に突き刺さり、中島を破壊する。
花沢「やってくれたわね」
中島「僕じゃまだ未熟みたいだね…こんな小細工で勝てる相手じゃないか」
花沢の追撃。千里眼で花沢の『気』を読み、行動を予測した中島は、それをかわし続ける。
花沢(このままじゃ埒があかないわ)
中島(掴み技にくる!)
つかみ合いに持ち込むため、花沢は一歩踏み込む。
それを予想していた中島はそれを利用して、巴投げの要領で投げる。
単なる巴投げではなく花沢の頭を強烈に打ち付けるようなやり方だった。
花沢は投げられたとき、防御を捨てて中島を掴みにきた。
抵抗する中島を力で強引に引き込み、膝蹴りを叩き込む。
力で劣っており、攻撃と回避がうまくいかず、劣勢に追い込まれてゆく中島。
花沢「くらいなさいっ!!」
中島の胸に直撃。嫌な音がする。
中島もやられっぱなしではない。花沢の口が開いたところを狙って、
口、というよりも喉の奥をめがけて指をつっこむ。
とっさに中島を突き飛ばして、致命傷は免れた。
この攻防のダメージに、二人はせきこむ。だが、花沢は中島のただならぬ様子に気づいた。
花沢「しまった!」
カツオ「中島のやつ、いつのまにか自然の気をためこんでたな」
先生「戦闘中はできないと言っていたではないか」
カツオ「弱点をペラペラ喋ったりするようなやつじゃないですよ」
彼らの台詞のとおり、中島は自然の気を溜めていた。
中島「自然の気を一緒に使えば、その威力は磯野砲を上回る…!!」
花沢はそれをさせまいと、おたけびをあげながら突進する。
中島(名前は…まあ、いいや)
突っ込んでくる花沢を見据え、必殺技の構えをとる。
そして、溜め込んだ自然の気と自らの気を解き放つ。
中島「中島砲!!!!」
眼前まで迫った花沢に直撃し、轟音とともに大爆発を起こした。
煽り 新・必殺技炸裂!!
06/12/23のバレ
中島「中島砲!!!!」
中島の手から強大な気が解き放たれ、標的である花沢を中心に大爆発を起こす。
カツオ「自然の気は無尽蔵にあるけど、扱いが難しい…だったな」
中島「ああ。やっぱり僕の実力じゃ、お爺ちゃんみたいにうまくできないや」
カツオ「確かに威力は俺の磯野砲を超えてるだろうな。あれでもまだ未完成なのか」
中島「磯野にはついさっき差を見せ付けられたからね。必死だったよ。
だけどもっと修行が必要だな。磯野を超えるためには…」
カツオ「俺だって負けてやる気はしないぜ。特にその変な名前の技にはな」
中島「そっちだって似たようなもんだろ」
中島はムッとした顔になる。
中島「多分お爺ちゃんも同じことをできると思ったから」
先生「花沢くん…」
中島の弁解は、先生の呟きで中断された。爆発と砂埃が晴れて花沢の姿が見えた。
花沢は血まみれでボロボロになっており、胴体には穴があいている。
カツオ「決着だな…」
中島「『気』を使い果たしたせいだろうね、もう花沢さんは『覚醒』の状態じゃない」
千里眼で花沢を見て断言する。
先生「うむ。だが二人ともよく戦っ」
花沢「っていうことは」
カツオ・中島・先生「!!!」
仰向けに倒れたままで、花沢が口を開く。喋ることすらできないほどの重傷と判断されていたらしい。
花沢「ここで『覚醒』できれば、私はその力をモノにしたってことよね」
フラフラになりながら立ち上がる。足つきどころか目つきもおぼつかない。
出血も夥しい。特に腹にあいた穴からは。
先生「やめろ、花沢くん!!」
それを聞かずに、花沢は気を高める。
花沢「やめろと言われてやめるわけにはいかないわ…
私はかもめ第三小学校最強の生物なのよ!!」
自分の状態も省みず、気を高める。そして……
中島「覚醒…したのか……自力で…」
中島が戦くように言った。
花沢「あなたの目で見たのなら間違いないわね。そう、私は覚醒したのよ」
カツオ「バカな…あの状態から」
花沢「バカだろうとなんだろうと…これが事実よ!」
覚醒した花沢は、開眼した中島に突進する。
花沢「決着よ!」
花沢の全身全霊を込めたパンチ。中島のガードを貫き、中島自身も貫く。
ガードに使った腕は折れ、拳が命中した腹部は拳大の穴があく。
この一撃で中島はくずおれ、花沢は力を使い果たし、膝をついた。
それでもなお、戦いを続けようと、拳を突き出そうとするが、その拳を先生が止めた。
花沢「なんのつもりですか?」
先生「言ったはずだぞ、殺し合いは認めんと」
花沢「戦いの邪魔をするなら先生だって容赦はできません」
先生「今の花沢くんに戦う力は残されていない。自分を大事にしなさい」
オーディス「そうだ。お前はよく戦った」
突然、オーディスが部屋に入ってきた。いきなりの闖入者に花沢以外の全員が呆気にとられた。
オーディス「一度やってみればわかりますが、強制強化を受けると発狂しそうなほどに苦痛を感じるのです。
雑念の入る戦い方は私には合わないのですぐにやめてしまいましたが…」
花沢をチラッと見る。
オーディス「それを自分の力にする者は初めて見ました。これは賞賛に値することです」
カツオ「そんなものを花沢さんにやらせたのか!!」
今度はカツオが強い怒りを見せた。
オーディス「あなたはお怒りのようですね。それなら都合がいい」
カツオ「なんだって?」
オーディス「ムニルを倒したのはあなたですね?同じ目にあわせてあげましょう。
そのためにわざわざここに来たのです」
カツオ「話が早いな。一連の出来事があんたの差し金なら、許してやる気はねえ」
カツオだけでなく、先生もオーディスに向かって構える。
オーディス「なんのつもりですか?」
先生「私の教え子に何かするつもりなら見過ごすわけにはいかん」
オーディス「悪いがあなたの実力では話にならない。ナカジマもハナザワも瀕死。
実質的にはカツオとの一対一です」
先生「それでも…戦わねばならぬときがあるのだ!!」
サザエは右肩に若いフネ、左肩に重傷を負った海平を担いで歩いていた。二人とも意識はない。
サザエ「なんで私がこんな目に…」
愚痴をこぼしながらも歩く。
サザエ「誰か仲間のいる所に行かなきゃ……」
こんな状態では満足に戦えない。
サザエ「人の声?」
ハッと気づいて耳を傾ける。しかし、会話の内容はわからない。
敵か味方かはわからないが、それでも声の方へ向かった。
「まずは左眼をえぐりましょう」
いきなり物騒な台詞が聞こえる。急いで駆けつけると、オーディスが
ボロボロになったカツオをのどわにして持ち上げ、左眼に指を近づけていた。
シーンの前後と比べるとオーディスもいくらかダメージを受けており、
そこそこの時間の戦闘があったと思われる。
オーディスはサザエに気づいて、そちらを見る。
サザエ「あなた…何をしているのかしら?」
言葉遣いは丁寧だが、サザエの目は斬れそうなほどに鋭く冷たかった。